ビタミンB6(ピドキサール)はイライラや気分不安に効く?作用機序と根拠論文を薬剤師が解説
婦人科の処方でデュファストンとかジエノゲストなどの女性ホルモン剤と一緒にビタミンB6(ピドキサール)が処方されることありませんか?
もしくは更年期障害に対してビタミンB6が処方されていることも多いと思います。
ぶっちゃけ
「ビタミンB6って本当に精神症状に意味があるの?」
「たかが水溶性ビタミン1種類の10mgや30mgで何が変わるの?」
と自分は疑問に思っていました。
この記事では自分の調べた内容を、
・ビタミンB6が脳でどう働くのか
・なぜイライラ・不安・抑うつに関係するのか
・科学的な根拠(論文ベース)
を薬剤師の視点で、できるだけわかりやすく解説します。
ビタミンB6(ピドキサール)とは何の薬?
ピドキサールはビタミンB6製剤です。
ビタミンB6は体内で活性型のピリドキサールリン酸(PLP)に変換され、さまざまな酵素反応を支える補酵素として働きます。
医療現場では主に次の目的で使われます。
- 末梢神経障害
- 妊娠悪阻
- 放射線障害
- 薬剤性神経障害の補助
- PMSやホルモン治療中の不調
特に後者のように、イライラや不安、気分の波に対して処方されるケースも少なくありません。
また用法は次の通りです。
6. 用法及び用量
- ピリドキサールリン酸エステル水和物として、通常、成人1日10~60mgを1~3回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
極めてまれであるが、依存症の場合には、より大量を用いる必要のある場合もある。
ちなみに、「依存症の場合」はおそらく「ビタミンB6依存性てんかん」の事だと思います。
それ以外にビタミンB6に依存する特定の疾患とかは見つからなかったので…
精神症状に関係するB6の3つの作用機序
ビタミンB6が精神症状に関係する理由は、エネルギーを増やすからではありません。
本質は、脳内の神経伝達物質を作る反応を支えることにあります。
1.神経伝達物質を作る材料工場を支える
ビタミンB6の活性型であるピリドキサールリン酸(PLP)は、補酵素として多くの酵素の合成に関与しています。
有名どころで言うと次のような神経伝達物質の合成に必須です。
- セロトニン(気分、安心感)
- ドパミン(意欲、快感)
- ノルアドレナリン(覚醒、集中)
- GABA(不安を抑える
例えば、
トリプトファン → セロトニン
グルタミン酸 → GABA
といった変換反応は、PLPがないと進みません。
つまりB6が不足すると、
セロトニンやGABAが十分に作れない → イライラ、不安、抑うつが出やすい
という構造になります。
ビタミンB6は気分を作る材料づくりの補助役なのです。
*補酵素:酵素が身体の中で化学反応を起こす際に働きを助けてくれる助っ人みたいなもの
2.ホルモンと脳内物質のバランス調整(PMSとの関係)
月経前やホルモン治療中に気分が不安定になる理由の一つに、エストロゲンとセロトニンの関係があります。
エストロゲンが変動すると、
セロトニン合成と分解のバランスが崩れ、
イライラや落ち込みが出やすくなります。
ビタミンB6は
- エストロゲン代謝
- トリプトファン代謝(セロトニンの材料)
の両方に関与します。
そのため、PMSやホルモン環境が乱れたときに、ビタミンB6が間接的に気分の安定に寄与すると考えられています。
3.興奮と抑制のバランス(GABA系)を整える
脳は常に
- 興奮系(グルタミン酸)
- 抑制系(GABA)
のバランスで保たれています。
のバランスで保たれています。
GABAは不安にブレーキをかける神経伝達物質です。
しかしGABAは、ピリドキサールリン酸(PLP)がないと合成できません。
ビタミンB6が不足すると
→GABAが減る
→興奮が抑えられない
→不安、焦燥、イライラが出やすくなる
ビタミンB6は不安にブレーキをかける側の物質づくりを支えています。
根拠論文で見るB6と精神症状
ここからは興味がある人のみどうぞ。
一応調べた内容を羅列しています。
神経伝達物質合成の分子生物学的根拠として、PLPは芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼなどの補酵素であり、セロトニン、ドパミン、GABA合成に必須であることが生化学レビューで示されています。
疫学研究では、米国NHANESデータを用いた解析で、血中PLPが高い人ほど抑うつ症状のリスクが低いという関連が報告されています。
またランダム化比較試験では、ビタミンB6投与によりイライラ、抑うつ感、疲労感などの感情症状が改善したという報告もあります。
効果は劇的ではありませんが、軽度から中等度の精神症状では意味のある補助療法と考えられています。
ピドキサールはどんな人に向いている?
- 月経前にイライラや気分の波が出る
- ホルモン治療中に情緒不安定になる
- SSRIを使うほどではない軽度の不安や抑うつ
- 栄養状態が不安な人
こうしたケースでは、まずB6で土台を整えるという選択肢は理にかなっているかなと思います。
注意点と限界
・B6は万能薬ではありません
・重度のPMDDやうつ病では、SSRIなど標準治療が優先されます
・高用量を長期間使用すると末梢神経障害のリスクがあります
あくまで補助療法、ベースを整える役割という位置づけです。
まとめ
ビタミンB6(ピドキサール)は、
エネルギーを増やす薬ではなく、
- 神経伝達物質を作る
- ホルモンと脳内物質のバランスを整える
- 不安にブレーキをかけるGABAを支える
という形で、脳の神経伝達物質を裏から支える薬です。
イライラや不安、気分不安定に対して、科学的にも使う意味がある補助的治療といえます。
参考文献
ピドキサール錠10mg添付文書
ビタミンB6依存性てんかん
Non-nutritional uses of vitamin B6
Vitamin B6 and Its Role in Cell Metabolism and Physiology
Associations of Dietary Intake of Vitamin B6 and Plasma Pyridoxal 5′-Phosphate Level With Depression in US Adults: Findings From NHANES 2005–2010
Associations of Dietary Intake of Vitamin B6 and Plasma Pyridoxal 5′-Phosphate Level With Depression in US Adults: Findings From NHANES 2005–2010
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