毎食直後に服用!?ミグリトールはなぜ食直前に服用するのか? 〜食後服用の効果も検証〜

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糖尿病治療薬のひとつであるミグリトールは、食後高血糖の改善に特化した薬です。処方時には「食直前に服用してください」と指導されることがほとんどですが、
「うっかり飲み忘れて、食後に飲んでも意味はあるの?」
と疑問に思ったことはないでしょうか。

実際最近の業務中にもミグリトールが毎食直前から毎食直後の服用に変わっている方がいました。
疑義したらあまりにもコンプライアンスが悪くて血糖コントロールもうまくいってないからとのことでした!
食事の最中でも飲んで良いよと何度も言っていたんですけどね、それでもだめだったみたい…

本記事では、ミグリトールの作用機序と服用タイミングの理由、そして食後に飲んだ場合の効果について、論文データに基づいて解説します。

目次

ミグリトールとは?

ミグリトールはα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)に分類されます。小腸の上部に存在するα-グルコシダーゼという酵素を阻害し、デンプンや二糖類が単糖に分解されるのを遅らせることで、糖の吸収速度を抑え、食後の血糖上昇を緩やかにします。糖分は単糖にならないと吸収できないのでね。

その結果、血糖変動が小さくなり、膵臓からのインスリン分泌負担が軽減されます。

ミグリトールの作用機序

ミグリトールの作用機序はα-グルコシダーゼ阻害作用による糖の吸収抑制です。

  • 主に小腸の粘膜表面で作用
  • 摂取した糖質の消化・吸収が遅れる
  • インスリン分泌のピークが緩やかになり、血糖変動が減少

なぜ食直前服用が基本なのか?

食直前に服用すると、薬の作用と食事中の糖質到達が時間的に一致し、消化酵素阻害効果が最大化します。
つまり食事の糖質が小腸に来ると同時に薬の作用によって単糖に分解できないようにしているってことです。
これにより、食後30〜60分に見られる急激な血糖ピークを効果的に抑制できます。

なお、食事の最中に服用することも可能ですが、消化が始まっているため、最初の急激な血糖上昇は完全には抑えきれません。

なお朝食直前に投与(Intake1)、朝食開始30分後に投与(Intake2)、投与2と同時に、朝食を摂取せずに投与(Intake3)の血糖値推移は以下の通りです。

Effects of miglitol taken just before or after breakfast on plasma glucose, serum insulin, glucagon and incretin levels after lunch in men with normal glucose tolerance, impaired fasting glucose or impaired glucose tolerance より引用

食後に飲んだ場合の効果

では実際に食後に飲んだ場合の効果はどうなるのでしょうか。
さっきの表を見た人の中には気づいた人もいるかもしれませんが、朝食時に服用したミグリトールの効果が昼食時の血糖値にも影響しているんですよね。

(1)同じ食事の血糖上昇抑制

  • 食事開始後15分または30分に服用しても、血糖AUC(曲線下面積)は有意に減少(Aoki et al., 2007
  • ただし、食直前服用と比べると初期ピークの抑制はやや劣る

(2)次の食事への影響

  • 朝食後に服用した場合でも、昼食後の血糖上昇が低下Aoki et al., 2011
  • 機序は「薬が残っている」わけではなく、前の食事の糖吸収遅延とインクレチン応答の変化によると考えられています

(3)長期的効果(HbA1c)

  • 3か月の比較試験では、食後投与でもHbA1c低下は食直前投与とほぼ同等Aoki et al., 2008
  • ただしGLP-1分泌やβ細胞保護の面からは、理論的に食直前が有利とされています

まとめ

  • ミグリトールは食直前服用が基本(初期ピークを効果的に抑制)
  • 食事中や食後30分以内でも一定の効果あり
  • 次の食事の血糖にも影響を与えることがある
  • 長期的なHbA1c改善は食後投与でも得られる可能性はあるが、代謝面での理論的優位性は食直前

という感じですかね。
結構いろいろ調べてみましたが、すごいコンプライアンスが悪くて血糖コントロール不良の人なら食直後服用もありかなと思います。

あと調べた論文に結構な頻度で青木先生って人が登場しててすごって思いました。

参考文献

Comparison of pre- vs. postmeal administration of miglitol for 3 months in type 2 diabetic patients
Usefulness of antidiabetic alpha-glucosidase inhibitors: a review on the timing of administration and effects on gut hormones
Effects of miglitol taken just before or after breakfast on plasma glucose, serum insulin, glucagon and incretin levels after lunch in men with normal glucose tolerance, impaired fasting glucose or impaired glucose tolerance
Administration of miglitol until 30 min after the start of a meal is effective in type 2 diabetic patients
Effects of alpha-glucosidase-inhibiting drugs on acute postprandial glucose and insulin responses: a systematic review and meta-analysis
医薬品インタビューフォーム セイブル錠
日本薬局方 ミグリトール錠

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