アモキシシリンの吸収を食物繊維が妨げるって本当?薬剤師が詳しく解説

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構成物質を

「抗生物質を飲むとき、ヨーグルトや食物繊維は一緒に摂らない方がいい」
そんな話を聞いたことはありませんか?

実は、アモキシシリンのような抗生物質は食物繊維との併用で吸収が下がることがあります。

今回は薬剤師が、その科学的な根拠と仕組みをやさしく解説します。

目次

アモキシシリンとは?どんな薬?

基本情報

アモキシシリンは、「βラクタム系抗生物質(ペニシリン系)」に分類されます。
広い範囲の細菌に効果があり、呼吸器感染症・尿路感染症などでよく処方されます。

  • 水に溶けやすい「親水性」の薬
  • 小腸上部で吸収される
  • 吸収には「PepT1(ペプチドトランスポーター)」が関与している

💬 POINT
親水性の薬は、脂溶性薬のように膜をすり抜けられません。
そのため「腸液中をどれだけスムーズに移動できるか」が吸収に大きく関係します。

物繊維で吸収が下がる理由

① 粘性の上昇による拡散の妨げ

水溶性食物繊維(ペクチン・グアーガム・難消化デキストリンなど)は、水を吸収してゲル状になります。
これにより腸内の液体が“とろみ”を帯び、薬の拡散が遅くなります。
粘度が上がると、薬の「拡散係数」が下がります。 その結果、腸の粘膜まで薬が届くスピードが遅くなり、吸収率が低下します。


② PepT1トランスポーターへのアクセス低下

アモキシシリンは小腸上皮に存在するPepT1トランスポーターを通って吸収されます。
しかし腸液の粘度が高まると、薬がこの受容体のある膜面に到達しにくくなります。

💬 薬剤師コメント
「PepT1は「薬を取り込む扉”のようなもの。
その前にゼリー状の壁ができると、薬がうまく届かなくなるイメージです。」

③ 食物繊維による吸着作用

一部の食物繊維(セルロース誘導体、リグニンなど)は薬を物理的に吸着します。
この吸着によって、腸で吸収される「遊離型」の薬が減り、吸収率が低下します。
難消化デキストリンやグアーガム入りの整腸剤を服用している場合、 抗生物質とは時間をあけて飲むのが望ましいです。

親水性・疎水性での違い

薬の性質粘性上昇の影響代表薬
疎水性(脂溶性)影響を受けにくいテオフィリンなど
親水性(水溶性)拡散が遅れて吸収低下アモキシシリンなど

アモキシシリンのような親水性薬は、水中を通って腸膜に到達する必要があります。
そのため「とろみ」や「粘性の高い液体」に弱いのです。

臨床的にはどの程度影響がある?

💬 薬剤師コメント
軽度の吸収低下であり、通常の服薬では問題になることは少ないです。
ただし、感染症が重度な場合や吸収率が重要な抗生物質では注意が必要かなと思います。

食物繊維を多く含む食品や整腸剤を摂取する場合は、 抗生物質とは1〜2時間あけて服用するのが安心です。
古い研究ですが、36.2g/日と7.8g/日の食物繊維を摂取する群でアモキシシリンの吸収量を研究したところ吸収量が7~8割くらいになったという報告もあります。
参考:Effect of structured dietary fiber on bioavailability of amoxicillin


まとめ

アモキシシリンは親水性+PepT1依存性の薬です。
食物繊維によって腸内の粘性が上がると吸収が下がり、軽度ながら吸収量にう影響を与えます。
服薬タイミングの工夫で吸収量の低下は防げるため、普段から食物繊維を大量に摂取している人は注意すると良いでしょう。
とは言っても日本人の平均食物繊維摂取量は15g程度なので気にしなくてもいいかもしれませんが。

参考文献

  1. Absorption and disposition kinetics of amoxicillin in normal human subjects
  2. Differential absorption of amoxicillin from the human small and large intestine
  3. Influence of konjac glucomannan and its derivatives on the oral pharmacokinetics of antimicrobial agent in antibiotics cocktails: Keep vigilant on dietary fiber supplement
  4. Effect of structured dietary fiber on bioavailability of amoxicillin
  5. Intestinal absorption of several beta-lactam antibiotics. V. Effect of amino beta-lactam analogues and dipeptides on the absorption of amino beta-lactam antibiotics
  6. Reappraisal of amoxycillin absorption kinetics

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