NSAIDs(ロキソニン®やセレコックス®など)を処方される際、「レバミピド(ムコスタ®)」が一緒に処方されることがありますよね?
自分も投薬の際には「痛み止めは胃を荒らすことがあるので、胃薬も一緒に処方されています。」などと患者さんに説明することがあります。
しかし少し前にX(旧Twitter)でも話題?になっていたように、
- レバミピドだけで胃潰瘍は予防できるの?
- PPI(ランソプラゾールなど)と何が違うの?
- なぜ人によって処方される胃薬が違うの?
と疑問に思ったことはありませんか。
そこで今回は、NSAIDsによる胃障害の予防におけるレバミピドの役割と、単独では不十分となるケースについてガイドラインや論文をもとに解説します。
NSAIDsはなぜ胃を荒らすの?
NSAIDsは、痛みや炎症の原因となる「プロスタグランジン(PG)」という物質の産生を抑えることで効果を発揮します。
しかし、プロスタグランジンには胃粘膜の防御にも重要な役割があります。
プロスタグランジンによる効果は以下の通りです。
- 胃粘液を分泌する
- 胃の血流を保つ
- 胃粘膜の修復を促す
- 重炭酸を分泌して胃酸を中和する
NSAIDsによってプロスタグランジンが減少すると、胃粘液や重炭酸分泌、胃粘膜血流、粘膜修復能が低下し、胃酸による障害を受けやすくなります。その結果、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには消化管出血のリスクが上昇します。
NSAIDsによってプロスタグランジンが減少すると、胃の防御機能が低下し、胃酸によるダメージを受けやすくなります。

レバミピドはどのような胃薬?
レバミピドは「胃粘膜保護薬」に分類される薬です。
胃酸を抑える薬ではなく、胃が本来持っている防御機能を高めることで胃粘膜を守ります。
主な作用は次のとおりです。
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
18.1.1 胃粘膜保護、損傷治癒促進作用
レバミピドは、内因性プロスタグランジン増加や胃粘液量増加などによる胃粘膜保護作用、損傷胃粘膜の治癒促進作用が認められている。
18.1.2 胃粘膜の炎症抑制作用
レバミピドは、フリーラジカル抑制や炎症性サイトカイン産生抑制などにより胃粘膜の炎症を抑制する作用が認められている。
医療用医薬品 : レバミピドより引用
簡単に言うと、レバミピドは「弱くなった胃粘膜をサポートする薬」です。
その一方で、胃酸の分泌を抑える作用はほとんどありません。
レバミピドは効果がない薬ではない
「レバミピドは意味がない」という意見を見かけることがありますが、それは正確ではありません。
複数の臨床試験をまとめたメタアナリシスでは、レバミピドはプラセボ(偽薬)と比較して、NSAIDsによる胃・十二指腸粘膜障害を減少させることが報告されています。
- 2013年のシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、15件のRCT(965例)が解析され、レバミピドはプラセボと比較してNSAIDsによる胃・十二指腸粘膜障害を有意に減少させた。
PubMed:Rebamipide helps defend against nonsteroidal anti-inflammatory drugs induced gastroenteropathy: a systematic review and meta-analysis - さらに2025年発表(2026年誌面掲載)のメタアナリシスでも、13試験の統合解析で、レバミピドはプラセボと比較して消化管粘膜障害を有意に減少させた。
PubMed:Efficacy of Rebamipide in the Prevention of Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drug-Induced Gastrointestinal Mucosal Breaks: A Systematic Review and Meta-Analysis
つまり、レバミピドには一定の予防効果があるということです
では、なぜ「レバミピドだけでは不十分」と言われることがあるのでしょうか。
レバミピド単独では不十分となる3つの理由
理由① 胃酸そのものは抑えられない
NSAIDsによって胃粘膜の防御力は低下します。
その状態で胃酸が分泌され続けると、粘膜はさらに傷つきやすくなります。
レバミピドは胃粘膜を保護しますが、胃酸の分泌量を減らすことはできません。
一方、PPIやP-CABは胃酸の分泌を強力に抑制するため、胃粘膜へのダメージそのものを減らすことができます。
つまり
- レバミピド:防御因子を増やす
- PPI・P-CAB:攻撃因子(胃酸)を減らす
という違いがあります。

理由② 高リスク患者ではPPIが推奨されている
NSAIDsを服用する人すべてが同じリスクというわけではありません。
次のような方は、胃潰瘍や消化管出血のリスクが高いとされています。
- 65歳以上の高齢者
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の既往がある
- 抗血栓薬を服用している
- ステロイドを服用している
- NSAIDsを長期間服用する
このような患者さんではレバミピドによる効果だけは不十分なことが多く、国内外のガイドラインでもPPIによる予防が推奨されています。
理由③ PPIの方がエビデンスが豊富
レバミピドにも一定のエビデンスはありますが、PPIはさらに多くの臨床試験(RCT)が行われています。
現在のガイドラインでも、
- 潰瘍予防効果
- 消化管出血予防
- 再発予防
について、多くのエビデンスが蓄積されているのはPPIです。
そのため、高リスク患者ではPPIが第一選択となっています。
レバミピドだけで十分な場合もある
ここまで読むと、「レバミピドは使う意味がないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、そうではありません。
例えば、
- 若い人
- NSAIDsを数日だけ使用する
- 胃潰瘍の既往がない
- 他にリスク因子がない
といった低リスク患者では、レバミピドのみが処方されることもあります。
胃薬は「誰にでも同じものを使う」のではなく、患者さんごとのリスクに応じて選択されています。
薬剤師が処方せんで確認しているポイント
薬剤師は、NSAIDsと胃薬が処方されている場合、次のような点を確認しています。
- NSAIDsは短期間か長期間か
- 患者さんの年齢
- 胃潰瘍の既往はあるか
- 抗血栓薬やステロイドを併用していないか
- 腎機能や肝機能に問題はないか
これらを総合的に判断し、「この患者さんにはレバミピドで十分か」「PPIを提案した方がよいか」を考えながら調剤を行っています。
特にPPIは肝代謝であり、肝機能障害の患者さんが長期服用した結果副作用が発現したなどの報告が定期的に目にします。
まとめ
NSAIDsによる胃障害を予防するために処方されるレバミピドは、「効果がない薬」ではありません。
胃粘膜の防御機能を高めることで、NSAIDsによる胃粘膜障害を軽減することが期待できます。
一方で、胃酸の分泌を抑える作用はないため、胃潰瘍や消化管出血のリスクが高い患者さんでは、PPIやP-CABが推奨されます。
大切なのは、「レバミピドかPPIか」という二者択一ではなく、患者さん一人ひとりのリスクに応じて適切な胃薬を選ぶことです。
もしNSAIDsを長期間服用する予定がある方や、過去に胃潰瘍を経験したことがある方は、自己判断せず、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
参考文献
・Evidence-based clinical practice guidelines for peptic ulcer disease 2020
・Rebamipide helps defend against nonsteroidal anti-inflammatory drugs induced gastroenteropathy: a systematic review and meta-analysis
・Efficacy of Rebamipide in the Prevention of NSAID-Induced Gastrointestinal Mucosal Breaks: A Systematic Review and Meta-Analysis
・Rebamipide as an Adjunctive Therapy for Gastrointestinal Diseases: An Umbrella Review
・Comparison of rebamipide and misoprostol in preventing NSAID-induced gastropathy (STORM Study)
・Guidelines for Prevention of NSAID-Related Ulcer Complications
・Prevention of NSAID-induced gastroduodenal ulcers
