医療用語には、普段の生活ではあまり耳にしない表現が多くあります。
「殿裂(でんれつ/でんせつ)」もそのひとつです。
実は殿裂=おしりの割れ目のことです。
カルテや診療記録の中で「殿裂に発疹あり」「殿裂部に褥瘡」などと書かれることがあります。医療従事者にはなじみ深い言葉ですが、一般の方にはわかりにくいかもしれません。この記事では、殿裂の意味や使われ方をやさしく解説します。
殿裂or臀裂の意味と位置
殿裂とは、臀部(でんぶ)の真ん中にある溝部分を指します。左右のおしりを分ける境目で、肛門の位置を含むエリアです。
一般的な表現では 「おしりの割れ目」 と考えてOKです。
医療用語としては、解剖学的な位置を明確に示すために「殿裂or臀裂」という表現が使われます。

臨床での使われ方
診療や記録では、殿裂という言葉は次のように使われます。
- 殿裂に発疹あり
- 殿裂部に褥瘡を認める
- 殿裂部皮膚に発赤(赤み)あり
- 殿裂に塗布
このように「どの部位に症状があるか」を明確に記録するために使われる言葉です。
それ以外にも塗り薬を塗る場所の指示として処方箋に記載されていたりします。
実際に自分も皮膚科の処方箋でよく目にします。
英語表現
殿裂を英語で表すと、いくつかの言い方があります。
- intergluteal cleft(最も一般的な医学的表現)
- natal cleft(こちらも医学論文などで使われる)
- gluteal cleft(gluteal=臀部の)
- 一般的な表現では “buttock cleft” や “buttock crease”
医学用語としては intergluteal cleft を覚えておくのがおすすめです。
殿裂に関わる疾患やトラブル
殿裂は皮膚がこすれやすく、汗もたまりやすい部位です。そのためさまざまな疾患やトラブルが生じます
- 皮膚炎:汗やおむつかぶれ、真菌(カビ)感染など
- 痔疾患:痔核、裂肛の発生部位として関係
- 褥瘡(床ずれ):寝たきりの方では殿裂周囲に発生しやすい
- 毛巣洞(パイロニダルシヌス):殿裂の毛穴に炎症が起こる病気
「長引く痛み」「出血」「膿が出る」といった症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
- 「殿裂(臀裂)」は おしりの割れ目の医学的表現
- 診療や記録では、皮膚炎・痔疾患・褥瘡などでよく登場
- 英語では intergluteal cleft が一般的
- 皮膚トラブルが起きやすい部位なので注意が必要
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